ロンドン五輪、始めて目覚ましをかけて早めの就寝を試みたが、大きく育った鈴虫の音がひっきりなしで、なんとなく寝ざめの悪い朝方3時45分。女子サッカーの決勝戦がキックオフした。8分後には完璧に目が覚めた。
結果は、金か銀かに区分けされたが、試合展開がこれほど際立って戦法の異なるチームの、それぞれの持てる力がふんだんに発揮された好試合はなかった。まさに「ウェンブリーの壮絶な日米決戦」だった。
スピードに勝るアメリカの速攻か? パスワークに勝る日本のチーム力か?
どちらも勝者にしたいと感じさせる熱戦は、男子と違って反則も少なく、かつて見たことのないハイレベルな試合だった。
まずは両チームの選手には、8万人もの大観衆に埋まったウェンブリーでプレーしたことを喜ぶと同時に誇りに思ってもらいたい。地元イギリスのチームが出るわけではないビッグスタジアムにこれほどの観衆が訪れたということは、世界の女子サッカーが、人気も実力も本格的なものになったことを示した。そして、この夜の観衆は素晴らしい試合に酔ったことだろう。幸せな8万人だ。
ペナルティーエリアでのアメリカ選手のハンドが各国新聞で話題になっているようだが、私もあのハンドがハンドと判定されていたら、2対2の同点でワールドカップに続いてPK戦だったといっときは思った。いや、試合展開そのものが変わっていたかもしれないとさえ。
でも、考え直した。なでしこが他のチームには見られないあれだけのチームワークパスプレーを世界に披露してくれたということは、金に勝るものはないけれど、なぜか銀でも十分素晴らしく輝いていると感じられたからだ。もはや、タラレバなどにこだわることはない。
「女子団体スポーツ史上崇高な決勝戦」こんな感想が本当のところだ。
北京の女子ソフト日米決戦も素晴らしい白熱した内容だったが、上野投手が個人的にクローズアップされる試合だったことと、観衆の数の違いからか、それほどの熱狂ぶりとはならなかった。このあたりに今回のサッカーと異なる点があるのかもしれない。野球好きの私としては少々複雑な思いは残るが、サッカーは地球儀ならぬ地球技になりつつあると言えるのではないだろうか。
なでしこ18名の栄光に万歳! そしてありがとう!