プーチンが大義・正義の特別軍事行動と称するウクライナ侵略は、泥沼化の様相となってきた。どこに大義と正義があると言うのだろうか。近隣諸国の元首クラスによる停戦を勧める外交にも応じる気配を見せないプーチン。彼らのプーチンに対する評価も停戦平和実現への姿勢を示さないことに諦めの発言が相次ぐ状況となっている。
なぜ、こうもかたくなにウクライナ人がロシア人を虐待しているといったフエイクを理由に侵略を続けるのだろうか。正に人の道ではない。
❖ソビエト連邦の復活、すなわち1991年にゴルバチョフが崩壊宣言したソビエト共産党の復活を意図しているのは確かなことであろう。つまり、プーチン自体が潜在的にこの崩壊を今に至っても容認することが出来ずにいる革命思想家で、レーニン思想に基づく非民主主義の共産主義者と理解するとわかりやすい。何のことはない、毛沢東を敬い、彼以上の指導者になるべく中国拡大を目論む習近平と同じ気質の人物だということではないか。そうした独裁専制主義者が西側への対抗心をあからさまに領土拡張を視野に入れているということだ。
そして、今まさにプーチンが指示している軍事侵攻における民間人暴行殺戮や強制移送といった手口は戦争犯罪であり、スターリンが行った粛清統治と第二次大戦時の不可侵条約を破壊した日本侵略、強制捕虜収容といった蛮行を彷彿とさせる。
西側への脅威感が拭えず、地中海への拠点としてクリミアを欲したプーチンの深謀遠慮は、ウクライナ全土を狙い、はてはモルドバなど旧ソ連邦の国々、いわば昔はロシアの支配下にあった民族国家を取り戻したいとまで考えているのではないだろうか。その手始めがウクライナだったと考えるわかりやすく、これこそがソビエト連邦復活であり、自由主義国家群に対抗するプーチンの精神構造ではないかと思えるのだ。
左派共産思想の危険性や怖さは№3557でも書いたように、こうしたプーチンのような人物が具体的な思想行動を起こした時にわかるわけで、ユダヤ民族虐殺弾圧と領土拡大戦略で稀代の悪魔的思想政治家と称されるヒトラーの再来を感じさせるものだ。いわば彼は21世紀のヒトラーになりかねない。
そういえば、ロシアにとって5月9日は対ドイツ戦勝利記念日である。ここで、どんな国家行事を企画し、ウクライナをネオナチとかナチズムの根城だと国内向けに発信しているプーチンが、何を口にするのか興味深いものがある。
現代社会は経済戦争のみならず武器侵攻といった暴挙においても、SNSまでをも駆使した情報戦が優劣に作用し、ヒトラー、スターリン時代とは著しく異なる。しかし、それは独裁者が意図する言論や報道の管理統制が徹底しにくい状況も意味している。ロシア制裁の観点からスポーツの世界でもロシア選手を締め出す傾向にあるが、これには異論がある。スポーツそのものは広く参加の権利をもたらすものと考えるが、現実問題として、著名な選手が海外の大会に出場することで、自国ロシアがウクライナで行っている現実を知ることになるのではないかと思うがいかがなものだろうか。アイススケートのレジェンドであるプルシェンコは、自らが主催する国内大会で会場の至る所や入場券にまでZマークを示し親プーチンを掲げているそうだ。独裁左派思想国の報道規制はさほどに国民を欺くのだ。中国も北朝鮮もそこは変わりがない。民主自由主義との違いはため息が出るほど大きなものがある。
左派思想には「解決するには、軍事同盟の対決ではなく国連が正当防衛権を発揮することが大事だ」と主張する向きがあるが、今の国連に何が望めるというのか。元より当事国のロシアが拒否権を有し、中国、インド、ベラルーシ、北朝鮮、南アフリカ、エジプト、エリトリアといった「ロシア寄り」か「はっきりしない国」も少なくない状況の国連は機能不全に陥りつつある。遺憾と抗議の発言をする事務総長がプーチンと会談してもおそらく情勢が変わることはないだろうし、その意欲も見え無い。民間人殺戮に麻痺状態で、自国の欲求を譲ることはないプーチンを国連が説得できるとは思えない。国連がプーチンの首に鈴をつけることが出来ると思っていること自体が、ナンセンスであり、夢見心地の絵空事も言えばいいというものではない。しまいには綺麗事としか聞こえない。事の次第は、プーチンがクリミア侵攻を実行した2014年に始まっていたと考えるべきで、その行為自体に国連は何も出来なかったのだから。