中国の海洋大国への野望が止まらない。南太平洋にバヌアツという島国がある。この国に中国が軍事基地を計画しているとのスクープをオーストラリアのメガメディアであるシドニー・モーニング・ヘラルド紙が伝えている。
このバヌアツはオーストラリアから2,000キロ程度しか離れておらず、地政学的にはオーストラリアのみならずニュージーランドや他の島嶼国家にとっても安全保障上尋常な話ではない。
これが事実ならば、紅海からスエズを抜けて地中海に入る重要航路の入り口に位置するアフリカのジブチに続いて2カ所目であり、太平洋では初のことである。中国は周知の通り、ODAというと聞こえはいいが、途上国へのインフラ整備や資金提供といった札束で相手のふところを叩く外交に徹している。小国をのみ込むには手っ取り早い方法と考えているのだろうか。そして、究極の目的は太平洋、インド洋、地中海ににらみを利かせる海洋軍事大国化を謀っていることは間違いない。アジアで数少ない親中派であるパキスタンとの関係も緊張関係にあるインドをにらんで中パ経済回廊と呼ぶ600億ドルという規模の投資を開始している。パキスタンのグワダルという港湾都市は日本にはあまり伝えられないが、中国の軍事基地化が進められているという。
別の観点からは、14億人とも言われる人口の食い扶持を確保するためにもこうした進出が必要だと考えているのかもしれない。それにしても、私には三国志に通ずるものがあると感じられてならないのだが、今、まさに中印パによる南アジア三国志の熾烈度が増しているという。
文化レベルの低い時代は、どこの国でも食うか食われるかの殺戮の歴史を持っているものだが、中国はそれが抜きん出ている。実際に、論語の教えなど中国人は鏡にしているのだろうかと思う。それは文化大革命や天安門事件といった近代政治下の大量殺戮にまで引き継がれている。その天安門事件の10年前にと小平が打ち出した市場経済路線は、江沢民等によって中国式社会主義経市場経済として発展をすることになる。資本主義経済とは異なる一党独裁国家ゆえに国庫が豊かになるスピードは資本主義国の比ではない。そこに腐敗が横行する所以があると言えるのかもしれない。
2001年にWTOに加盟することで更にめざましい進展を続けた中国は、世界制覇という野心を隠すことのない習近平の元、世界一の下請け国から、世界一の消費国、そして世界一の軍事海洋国へと実体を変えつつあるのだ。
記事一覧
No.2984 バヌアツ
2018.04.13