昨7日は「北方領土の日」。古く1855年「日魯通好条約」を締結した日にちなんで制定されたという。いまだ帰らぬ故郷への郷愁にかられる人が多くいる現実、そしてそういった方々も高齢化によってロシア領としての土地に踏み入ることが出来てもそこにはイエローフラッグは羽ばたいていることはない。
そんな日本源地の返還問題が政治交渉の場にある状況(少なくとも日本人の期待感は変わらない)において、昨日、北方領土の日に2,000人規模の軍事演習を実行したロシア。
安倍総理ははっきりと口にはしないものの、可能性を探りながらおそらくまずは歯舞・色丹の2島返還を目的にプーチンとの会談を繰り返してきたものと思われる。そして他の国後・択捉までもの経済発展に共同作業をする話まで進んでいるのだ。まるで4島をニンジンがごとく目の前にぶら下げて金を拠出させる反面、一方でミサイル配備など軍事拠点化を目論むプーチン。返還の意思などないがごとくにしか理解できない。そもそもロシアの軍事的戦略は過去にはアフガン、さらにはクリミアやシリアでもわかる通り、中国とは異質の軍事拠点獲得戦略である。世界地図上の要衝と考えられる地域に突然のように侵攻し、治めようとの思考が見える。それは、反米、反NATOに染まっているかのようで、まさに冷戦時代の再来を感じさせる。
考えてみれば、1945年8月の終戦直前にどさくさに紛れてという表現でもいいくらいに突如「日ソ不可侵条約」を破って北方に侵攻した国である。8月15日を過ぎてもソ連の略奪的侵略は続いたのである。そうした国家気質を今でも変わりなく有していることは疑うべくもない。
今にして思えば、沖縄返還が叶った昭和47年の同時期にソ連にも返還を強く迫る外交がなされたのだろうか。あるいは、ゴルバチョフのペレストロイカ時代により突っ込んだ返還交渉はできなかったのだろうか。今回の軍事演習によって、日本人の期待感はかなり薄らいでいくのではないかと案じる。 中国がなぜ尖閣や沖縄に目を付けるかという論理と同じく、ロシアがなぜこの4島を手放す方向にないかというのは、世界地図を見ていただければ合点がいくはずです。対米戦略における太平洋を西から北から望む位置にあります。シリアもクリミアも同様の地政学上の見地から重要視していることがよくわかります。中国も同様で太平洋に出ていくためには沖縄が壁になっているということです。ロシアも良好な軍事拠点、もっと言えば軍港が新冷戦時代に欠かせないと謀っているのは衆目が一致するところでしょう。
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No.2965 北方領土の日
2018.02.08