春日部市内16号沿いに1階がラーメン屋、2階が焼肉屋の複合店舗があったが20年前に閉店し、その後は買い手も借り手もつかず放置状態となっていた。
20年そのままというのもすごいと思うが、驚くというか、恐ろしいことに、なんと数日まえのこと、この1階で白骨化した死体が発見された。死体の周りには3年前の日付の物があったことと、ちょうどその頃、人の気配があるという証言もあったという。そうした状況から、ホームレスが住み着いたものの何らかの理由で死に至ったとみられているが、真実はまだ闇の中。
この物件、交通量の多い国道沿いにあるが、草が生い茂ったままの荒れ放題で、人目でそれとわかる建物だという。
このニュースを早朝耳にして、所用で越谷に出かける道すがら、4号国道せんげん台駅交差点手前の右側に、以前数回訪れたことのある回転寿司の店が、前述の状況と同じような姿になっているのに直面した。出入り口には薄汚れたトラロープがかけられているものの、店舗周囲に生える背高の草の量が多く、見るからに廃屋状態だとわかる。
駅に近い人通りの多い旧国道沿いなのにどうして?という疑問が、ついさっき耳にしたニュースに負い被さる。春日部の例は駅には近くないが、こちらは商業地としては一等地の一角にありながら次の利用者がないのが不思議に感じられる。
マーケティングの領域を超える物件それぞれが持つ魔性的なものか、はたまた土地または建物が、千客万来の意味で方角、風水、縁起といったものに適していないことに因を発するのか。信ずる者も救われない場合があるということか。
空き家問題は戸建住宅を対象とする場合が多いが、空き店舗、空きビルも社会現象としてけっして小さくない問題である。
現職時代に各地へ視察で出かけた際、およそどこの街でも見かけたのが、地元商業の衰退が大店法の改正で、その速度を早めたことによる目貫通りのャッター化だが、それだけでなく中層ビルの廃墟化もあきらかだった。こちらは、たとえば少子化により塾などが淘汰されたことなども一因にあるだろう。
1960年代に鉄道会社の沿線開発から始まった1000戸から3000戸の大型戸建住宅地や、また、それ以前に日本住宅公団(現UR都市機構)により全国各地に建設された大型団地では、新世代が定住を望まず、高齢者が残されたり、空き家が増えることで活力を失いかけている。いや、すでに失っている地もある。
とくに戸建ての場合は空き家の放置で治安などの不安が増す傾向にある。
そんなことから空き家対策特別措置法が昨年2月に施行され、市町村権限が強化されたが、なかなか現実には有効性が上がっていないようだ。
そして、前述の国道に面した空き店舗問題となると、競争社会の厳しさから生じた負け組が、整理も出来ないまま建物を野ざらしにせざるを得ないということなのだろうか。
大資本をバックにした有名チェーン店は、仕入れや宣伝で個人店を凌駕するから、よほどの独創性を打ち出せない限り、個人店が長い戦いに勝ち抜くことは難儀なはずだ。
小泉政権下での規制改革は功罪あるが、大資本有利な展開を助長した結果、あらゆる業種において個性ある個人店舗の衰退を加速させたことは大きな罪だ。
しかし、一旦は勝ち組と思えてもかならずしも長続きしない例も後を絶たない。岐阜県本巣市にLCワールド本巣という大型複合ショッピングモールがある。ところが、この施設も長らく空き家のまま次の予定が立っていないという。建物周囲や駐車場のあちこちに草が群生する光景は、まさにメガ空き家といったところ。
中国資本も国内広く進出しているというし、郊外型消費動向が定着した現代にあって、個人商店および商店街は今後どうしたらプラスの方向に変質できるのだろうか?