教育の世界では、こと教科書選定という部分においては企業論理が横行し、そこに小さな権益?が生まれるという暗部が長年にわたり常態化していたようだ。
この場合、既得権益は主に教師、しかもベテラン教師が対象となっている場合が多いようだ。
理由は、教科書の改訂にあたって現場の声を反映させる目的でヒヤリングを実施することへの謝礼ということだが、それは表向きの理由であって内実は出版社側による継続的取引と新規売り込みのせめぎ合いというのが本当のところではないだろうか。
察するところ謝礼の形態は、金銭、物品、接待ということになろうが、慣習的な面が実態としてあるやに思う。
複数ある教科書取り扱い業者は一定のルートをもっているか否かでほぼランク付けされるということだが、未来永劫安定が約束されているわけではないのは当然で、ライバル会社も新規採用に向けて黙ってはいない。
また一方で、教師も黙ってはいない。基本的にあれこれ注文をつけることが謝礼の源であるし、とくに学習指導要領が新たに実施される年度などは、会社側の営業も激しくなることもあり、営業担当にあれこれ講釈を並べて継続的な人間関係を築こうと努力するのである。うるさ型の教師は営業サイドにとってスミにおけない存在になることもあるだろう。
しかしながら、対象となる教師が多いとは思えない。倫理観の高い教師は少なくないと確信しているので、多くは真面目に教科書改訂を思慮して提言しているものと思う。
要するに、どの世界にも硬軟織り交ぜて様々な人材がいるということではないだろうか。
また見方を変えれば、公立か私立かでも内容は異なる。公立は行政による日常管理機能が働く面もあるという点で、私立とはまったく異なる面がある。そもそも教師にとって働く現場が私立か公立かは人生を左右するほど違うものらしい。
事業者側は、交渉を有利に進めるために学校側が持つしがらみをとことん追いかけることもあるだろう。選挙もしがらみだよりという一面があるが、この点、営業も選挙戦術と似たところがあるということか。
その結果として、政治家にたどりつくことがあるかもしれないが、はたして推測の域は出ない。あくまでも可能性の話である。また、仮にあったにしても平議員ではない大物ということになるのだろう。
以下は新聞報道によるものだが、教科書協会が、このたび謝礼の全面禁止を打ち出した。謝礼のみならず教科書無償提供といった資金力の差が影響する実態も堂々と行われていたということであれば、それは競争原理に縁遠い話であることは間違いない。
ちなみに高校の教科書を発行している事業者は39社あり、無償提供していたのは5社で金額にして約2,000万円。
そのうち、1,800万円が1社でまかなわれていたというのだから、この業界の古臭い体質を示しているものと思われる。
こうした状況において、今回の全面禁止を受けても、その目をくぐり抜けてあいも変わらずという実態が発覚した場合、つまり新たに裏金という感覚で金銭物品が動いた場合、協会はどのような対処をすることになるのか。教育の世界だからこそ、この機会に全面浄化を期してもらいたいものです。