先週、耳を疑うような暗いニュースに接した・・・「虐待」
県議会の場でもたびたび取り上げ、私にとって、今の社会で最も憂慮する出来事となっている虐待が埼玉県内で発生した。鴻巣市で実子虐待、春日部市で高齢者虐待。後者は2010年に4日間で3人の死者が出ていた。78歳から95歳の女性がその被害者である。
このニュースは関西方面に委員会の視察研修で出張していた時に入った。関西の新聞でも社会面4分1程度を使ったトップ記事の扱いだった。報道各紙を読む限り、事件当時26歳だった容疑者の採用時点から問題があったことがうかがえる。医師でもある理事長や施設長によると「逮捕者が出て驚いた。すぐに通報しなかったのは疑いの段階ですべきではないと判断した。疑わしいままの家族への説明は適切ではないと考えた」
この説明になるほどと思う人がいるだろうか?と思うのだが・・・。
結局、3人は心筋梗塞や脳梗塞などの診断で、解剖されることもなく荼毘にふされていた。
当時の勤務者全員が「虐待を見聞きしていない」と回答していた。
県も3人目の死者が出た4日後に立ち入り調査をしていたが、「死因に不審性はない」とする嘱託医の説明で、それ以上の判定が出来なかった。
怒りのぶつけどころに困る事件概容だが、これはまさに凶悪殺人事件と表現すべき虐待事件ではないだろうか。80、90になる高齢者の胸や顎を殴ることなど普通出来ないと一般常識的に考えるところに落とし穴があるということか。
埼玉県では、行政通報があり、虐待と判断したケースでの高齢者虐待は例年650件程度の範囲であるという。在宅介護での子どもなどによる近親虐待が多く、この場合の通報は少ないということなので実態はまだまだ奥が深いようだ。
反対に児童虐待もあとを絶たない。鴻巣市の場合、39歳になる父親が生後35日の次男の頭を叩きつけ、揺さぶり、低酸素脳症で死亡させたというもの。
児童虐待は、通常子どもは叱られる内容に疑問を持つなどということは少なく、怒られる恐怖感よりも、親から見放される恐怖感が優先する場合が多く虐待を虐待と自己判断できないという。そういうものかと感じはすれど、なんとなく釈然としない。
長男2歳、長女1歳の家庭、しかも2010年6月から生活保護を受けており、当初は産婦人科受診もしていなかったという容疑者かつ被害者の家庭事情。市では養育支援が必要と定期的に訪問していたという。
つまり、生活保護を受けている状態で3人の子どもが出来た・・・生活保護家庭に子どもを作る権利が無いとは言わないが、毎年続けて3人となるとどうだろうか。労働意欲を見せない39歳の世帯主の問題もあるだろうし、女性が外に出て働くことのできる子育て支援は?と思うところもあるし、こうした場合の福祉行政のあり方は難しい。
日本ではこうした場合、貧困家庭として優先的に弱者救済施策を構築するべきとする思想を唱える傾向が政治的にもある。
親の責任とはなんぞや? 子育ての義務と責任は人の道だが、その自信と確証がなければ作らない選択も人の道なのではないだろうか? どうにも難しく悩ましい事例ではある。
生まれ出でた子どもには生ける権利があり、元気に育ってほしいと願うのは当たり前のことだ。