急激に寒さが増している。油類の価格高騰は、今年の冬のぬくもり費を押し上げることになるだろう。ことに、高齢者にとっては身体にも家計にも厳しいことになりそうだ。高温続きの狂夏も辛かったが、酷寒、厳冬を乗り切るのも100%健常とは言えない高齢者にとって楽なことではない。
しかし、落ち着いた暮らしが出来るものと一般的に考えられている老人施設にも、陽気がもたらす厳しさとは別の想定外の落し穴があるようだ。
熊本県宇土市の養護老人ホームで殺人事件が発生した。サスペンスドラマではない実話だが、別に驚く話としてブログに取り上げたわけではない。こうした事件が起こる可能性は大いにあると思われる。まだ、今回の事件の動機などの詳細はあきらかではない。状況としては2年前から入居している62歳の男性が被害者で、容疑者の80歳男性は4カ月前に入所してきたばかりだという。
これで感じたのは、まだ元気に社会貢献している年齢と普通一般に考えがちな60歳熟年が、どういった事情で養護老人施設に入ることになったのだろうかということ。さらに、入居したての80歳が包丁で相手の腹を何度も刺すという行状には、いくら頭をひねってみても、そこに至るシナリオが思い浮かばない。
福祉という観点における高齢者施設では様々な事件が発生する。介護職員による虐待暴行もたびたびのことである。施設の拡充や人的要素の向上という政治行政的課題がいくら解決されようとも、そこに拘わる人心が複雑に絡む一つ屋根の下では、身勝手な自己流モラルが飛び交うものなのだろうか? そう考えるとせつなく夢のない世界としか感じられないのだが。
今回の事件の当事者二人にとって、養護老人ホームはけっしてやすらぎの郷ではなかったということになるが、入居者同士の頑固さに起因するいざこざは日常的なのかもしれない。