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No.2879 学校の対応がのんびり過ぎないか?

2017.05.09

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 県内で気になる出来事が起こった。川口市で中学生2年生の女子が歩道橋から飛び降りて亡くなった。本人は部活の人間関係で悩んでいたということで関係教師の数人に相談していたという。部活というから自動的に体育系と思ってしまったが、吹奏楽部で打楽器を担当していたという。そして、この生徒は親にも相談していたようで母親が学校の教育相談室に「娘の人間関係の悩み」を相談していた事実もある。

 市教育部長によると「相談に応じている最中だった」としているが、この生徒が部活をやめたいと先生に打ち明けていたのは1月だったという。マイナス思考の思い込みを自制心で遠ざけることが出来る子どもはそう多くはないはずである。悩み始めたら多少の説得では効き目はなく、押しつけの解決策を与えるだけでは短い期間には逆に悩みが増幅していることの方が多いことも考えられる。とくに人間関係はナイーブな問題であり、社会人でも言えることだがノイローゼの最大の原因となっていることは自身20年に及ぶ人事の担当経験からも理解できる。私の経験上は、そうした事実を確認すると即本人面談をし、上司確認をし、それとなく酒席に参加して多くの社員や対象社員と仲の良い同僚の話を聞くなどしたものだ。それにより、翌月頭には異動発令を出すこともあった。そういった手早さで対応したものだ。
 この女子生徒はなんとか頑張ろうと部活を続けていたが日頃の悩みは解消することが出来ないままゴールデンウィークの集中部活に参加していてとうとう・・・いじめがあったかどうかは定かではないが自ら命を断つ道を選択してしまった。悲惨この上ない学校関係の出来事であり、親の気持ちは量り知れない。
 企業組織の場合、適材適所という人事配置を理想としてその実現を徹底することが前提にある。ところが、個々の能力の関係もあって全てそうさせることの難しさが常にある。ある課の空気も生産性にも欠かせない存在と認められる社員はそこから異動させることの逆効果もある。ところがそれは人事の硬直化をもたらす。そこで能力のある社員はどこの所属にしてもしっかりやってくれるだろうとの思いで、硬直化防止と新鮮さをもたらすために異動をしてみるとそこで仕事内容もしくは人間関係で息詰まる場合がある。多方は人間関係の場合がほとんである。大人ゆえ忍耐するだろうと決めつけて問題発覚後もたもたしてると退職届けが出されることになる。申し訳なく可哀想な流れである。さりとてこうした事を皆無にさせる人事技術はないに等しい。人間関係の問題を生じる可能性の高い人間もしくはナイーブで精神的にか細い人間を採用しないことが肝要なのだろうが、これがどうしてなかなか。

 学校は企業と異なり異動がないが、真剣に考えた結果必要と認められれば学校替えがあってもいいだろう。子ども、とくに思春期の女子のナイーブさは際立って重く、深い。いや、そう考えて問題発覚後は素早い対応をしなければならない。もちろん、男子が対象でも同じことは言えるのだが、今回の川口市の場合はたしてどうだったのか。担任や部活顧問の人間資質もこうした場合に大きな力を持っていると私は思う。しかし、母親までが相談に乗り出していた事実を考えると、学校全体に子どもの悩みを軽く見ていたフシはなかっただろうか。子どもの自殺の原因は「いじめ」が多いとしてもこれまで発生した同様のことに強く感じるのはやはり学校対応の遅さであり役所的、官僚的という点である。教育相談室とはいったいどういう理念の元に設置され、どういった経験者が配置されているのかはわからない。実のある相談対応があったならばと思えてならない。