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No.2825 文化財保護法違反

2016.11.24

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 犯罪で最も憎むべきは大きくは戦争、日常では殺人であることに異論はないと思う。ところが、人名に関わる犯罪ではないが個人的に無性に腹立たしく感じる犯罪がある。文化財保護法違反というものである。 

 数日前のことになるが、奈良市興福寺の国宝に何らかの液体らしきものがかけられていたというニュースがあった。防犯カメラに3人の不審者が写っているということだが、どんな思いでこうした行動を起こすにいたるのであろうか。
 国宝にはかり知れない魅力を感じるのは多くの方が共有することではなかろうか。私は国宝に対してまずは尊敬の念を持ち、国宝を求めての旅を計画するのがこの上なく好きである。
 今回、ニュースヘッドを耳にした瞬間、えっ!まさか阿修羅像や天燈鬼像、龍燈鬼像が?と瞬時に思った。それは異様な不安感というべきものであった。それらは無事だったものの他の国宝3点が被害にあった。東金堂の持国天像もその一つだったが、場所が台座への不とどきということで少しの安堵感を感じた。しかし、怒りのレベルはかなり高いものがあった。
 その後、橿原神宮でも同様の被害が見つかったというので、特定の人物によるものかどうか・・・いったいどういった人物が。
 この種の犯罪がその後に与える影響は小さくない。展示形式が変わることなどが考えられる。純粋に国宝が好きで素のまま間近に見入ることがなによりであるのに、ガラスで仕切られたり、遠目になったりというのでは歴史的価値に接する度合いが寂しくなる。

 知名度も訪れる人も興福寺ほどではないが、国宝と重文の多さではひけをとらない寺に新薬師寺がある。伽藍全体はさほどの規模ではないが萩の寺という呼称もあるしっとりとしたわびさびを感じさせる古刹である。
 重文の南門をくぐり、渋さいっぱいの国宝の本堂に入ると国宝薬師如来坐像を円陣隊形で守護する十二神将の大見得を切る姿が居並ぶ。ことに伐折羅(婆娑羅)大将の凄味にはひきつけられるが、1体を除き他のすべてが国宝に指定されており、時を忘れて佇んでしまうほどの迫力で観る側を圧倒する。ところが、手を伸ばせば触れることが出来そうな距離なので今回のような不心得な行為があったとしたらどんなことになるか空恐ろしい。
 もちろん、好みは別にしてことに京都や奈良にはこうした名刹が多いわけで、非道な行為の対象として狙われるのは有り得ることなのかもしれないが、そうした発想が生じることが悲しいことだと強く感じた事件である。