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No.3730 解雇規制緩和

2024.09.14

 掲題のワードは、昨日の自民党総裁選で小泉進次郎氏が改革対象として掲げた政策です。これには河野候補も同様の考え方を述べていました。はたしてこれをどう思うかについては当然議論の分かれるところだと思いますが、私はここまでの改革が今必要とは感じません。いささか企業側に立ちすぎているように思えるのです。
 最近聞かれなくなりましたが、戦後日本の高度成長を支えた要因として語られ続けてきたことに「三種の神器」というものがあります。そのうちの二種である年功序列と労働組合は経済成長がバブルに向かう過程で消滅または無力化しています。そして残された一種が終身雇用制度です。しかし、これもバブル崩壊を契機に早期退職優遇制度から整理解雇といった経営側論理が押し出されることで、その形を変えてきたというのが事実でしょう。つまり、今においては、完全終身雇用制度すら形骸化しつつあるのですが、まだ企業単体別に違いがあるというのも事実です。法律で守られている部分もあります。
 この神器とも言われた3制度は、労働者側の立場から言えば、安心して働けるという労働安定剤的性質のもので、これが日本人特有の勤勉性に拍車をかけることになり、世界が驚く高度成長につながったのです。しかし、可処分所得の伸び率が鈍化し、日本の経済そのものが遅滞する期間が長期化したことで、残された終身雇用をも消滅させる可能性の高い解雇規制緩和論が出てきたものと思いますが、企業と労働者間の信頼関係を消失させるのが関の山だと思います。
 これが定着すれば、勝ち組負け組が今でも問われる資本主義制度にあって、さらに進みかねないリスクが多いはずです。人はもって生まれて、運、能力、生い立ちに差があり、そして30歳も過ぎれば健康にまで差が生じてきます。
 金銭的話し合いで合意できればといっても、常に企業側が強い立場にあるのは事実でしょうから、法規制で解雇緩和をするのは問題多しです。そういう点から、解雇の自由化につながる話は、時期尚早であり、日本的ではないと確信します。まずは、企業経営としての改革努力を積み上げることが必要ではないでしょうか。ただ、少年期、青年期、若者といった世代から日本人気質も年々性質を変えてきているのも事実ですので、終身雇用制度が無くなる日が来ることも有るやもしれませんね。
この小泉候補の発想には他にも驚くことがあります。年金支給年齢を80歳にしてもいいのではないかというものです。40前半の年齢で、かつ年金に頼らなくとも生涯安定と思われる小泉さんでしょうが、国のトップとして高度成長の功労者である高齢者への想いが軽すぎるのはいかがなものでしょうか。