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No.3575 ボリス・ボンダレフ参事官

2022.06.17

 掲題の人物は、この5月まで在ジュネーブ国連代表部参事官だったロシア人です。大きく報道されませんでしたが、5月の頃、彼は次のような発言をしています。

「外交官として20年間、我がロシアの外交政策の様々な展開を見てきたが、今年の2月24日ほど母国を恥じた事はない。プーチンがウクライナに対して、そして欧米世界全体に対して解き放った侵略戦争は、ウクライナ国民に対する犯罪というだけで無く、おそらくロシア国民に対する最も重大かつ深刻な犯罪である。この戦争は、我が国の民主主義に対する希望をZという文字で塗りつぶしてしまった。
 この戦争を思いついた人々は、ただ一つのことを望んでいる。それは、永遠に権力の座にとどまり、威厳はあるが味気ない宮殿に住み、ロシア海軍に匹敵するトン数でコストのかかるヨットで航海し、無制限の力と完全なる不処罰の待遇を享受する。それを達成するために彼らは必要なだけの命を犠牲にすることをいとわない。その結果、この彼らの目的のためだけに想像を絶する数のウクライナ人とロシア人が死んでいる。
 この20年間、外務省の仕事における公平な情報、公平な分析、冷静な予測が失われており、その代わりに、1930年代のソビエト新聞のプロパガンダ精神により自分自身を欺くシステムが構築されている。ラブロフ大臣がこの状況をよく表している。私の同僚たちが高い評価をしていた専門的教育を受けた知識人が、核兵器で世界を脅かす人物になってしまったのだ。
 今の外務省は外交活動ではなく、戦争挑発、嘘、憎しみに関する事のみに徹している。それは少数の利益に奉仕し、私の国の更なる孤立と劣化に貢献している。ロシアにはもはや同盟国はおらず、無謀で理不尽な政策以外に責めるべきものはない。
 私は20年間外交官を勤めてきたが、もはやこの血まみれで、機知に富が無い、まったく不必要な無知を分かち合うことは出来ない」

 この発言の後、彼は当職を辞任しています。亡命云々のニュースは聴きませんが、そうなるのは必然的でしょう。当然ながら命を狙われる状況になったであろうことから、西側の国においてその知識を発揮する場が与えられるのではないかと思います。彼の専門は、ミサイル・核不拡散等に関する軍縮関連の専門家ということです。
 発言にある同盟国はおらずという部分については、ベラルーシの存在や国連で同一歩調をとる中国などがいることにはあえて触れようとしていません。上司であるラブロフ外相の思考変貌に痛烈な批判を掲げる形で、祖国の誤った政策への失望感をあらわにしています。
 残念なのは独裁強権全体共産主義思想に特徴的な情報統制によって、このボンダレフ氏の発言がロシア国内に浸透していないことです。