今更といったタイトルだが、月が替わって今日2月1日に中国が法制化した海警法が施行されることになっている。反論する体制も無くあっという間に法律が制定され、しかもわずか1週間足らずで施行されるというのが一党独裁国家たる所以である。何事も自国の野望に添って素早く、したたかなことこの上無い。
尖閣諸島海域のみならず南沙、西沙も含むシナ海全域で航行の自由を独占せんとする中国に対して、日米豪印に加え、英仏独までもが対抗する姿勢を見せている。
ここ数カ月の中国は、その覇権主義を隠すでもなく戦狼意欲剥きだしと言ってもよいくらいだ。ざっと以下のようなことが示されている。香港・ウィグル問題は別とする。
◆昨年の8月26日のこと、西沙諸島海域で無人の商業船を標的にした対艦弾道ミサイルの発射実験を行っていた。無論、アメリカの空母を想定にした空母キラーの実験であり、内陸部からの発射を2発。一つは「東風DF26B」で射程距離4000㌔を青海省から、もう一つは射程距離1500㌔の「DF21D」を浙江省から発射。どちらもほぼ同時に命中し、敵艦に見立てた船は轟沈と相成った。
◆著名な軍人かつ国防大学教授が自らの著書で、今世紀半ばまでに中国の軍事力を世界最強にすると断言している。「戦場に2位という序列はなく、勝つか負けるかという結果だけがある」そして、将来起こり得る戦争を8カ所指定している。台湾、尖閣、ロシア、インドなどがあげられているとされる。
習近平の対米思考が、アメリカに追いつけ追い越せであり、それは経済面以上に軍事力の観点にあることがわかる。核軍縮の最大の障壁は中国にとって替わることも想定される。
◆中国としては3隻目になる空母が今年中に進水の予定となっている。今年が共産党創設100年にあたる節目の年であることから、軍事的誇示が狙いであることは言うまでもない。アメリカでもまだ1隻しか採用されていない電磁式カタパルトを採用するという。これは環球時報や中央テレビで報じ、国民の高揚心を煽ることも忘れていない。
◆今月20日にはインド軍とまたまた衝突している。小競り合い的レベルとは言うものの、双方共に負傷者が出た事実は終わりなき国境紛争も想定される。理由はインド側に施設を設けるなど、中国側の実効支配行動があげられている。
◆米露の核軍縮交渉の進展に賛意を示すものの、両国との弾頭配備数の不均衡を理由に核開発を進めるために自らは軍縮には応じないとした。中国人民大学教授は「米軍が増強している現実で中国が制限することはない。報復能力を確実にするために核攻撃手段を増す必要がある」とも語っており、実際は、核弾道ミサイルを搭載する戦略爆撃機の準備にとりかかっているようだ。
このように、香港やウィグルの非人権行為が日々行われている一方で、領土拡張のためには何でもやるといった中国共産党の世界制覇に向けた野望はとどまることがない。世界の平和と安定の為とは言うが、この先日本も香港やウィグルのような立場にならないと誰が言えるだろうか。もっとも、その前に台湾がどうなるかだが、海警法は今日にでも日本に対して適用され、襲撃拿捕される公船や漁船が出る可能性も有るのだ。尖閣海域は我が領海と言ってはばからない中国は、法律の効果を即実利のために実用しかねない。なんとも身勝手な法律を作るものだが、問題は日本政府の対応にもある。佐藤政久外交部会長をはじめとする外交部会が、対応対策を打ち出すことを政府に求めている。ジェントリーな日本的対応は中国に理解されるどころか、野望実現に向けた軽微なハードル程度と理解しているか、まったく意に介していないやもしれぬと思う。
最近の中国を今少し掘り下げてみよう。
香港の現状に習近平が、国家安全維持法を断固として執行し、暴力を止めていると香港政府執行部を賞賛している。施行以来、反体制活動家の多くを逮捕収容し、主力活動家の罪状を重いものに変更しているのもすべて本土意向があってのことであろう。人権無視暴力をやるだけやった後に暴力を止めているとはよく言ったものだ。
武漢では、WHOの調査団が入る段階で、コロナで家族を失った遺族への圧力もしくはニンジン政策が打ち出されている。遺族の主張が国家に不利になることを懸念してそのSNSグループの連絡網を遮断するといういわば言論統制などがそれである。家族の中には「調査団は真相を調べるべきで、私たちとの面会をするべきだ」と語る向きもある。5万円という金額で海外メディアの取材を受けないよう警告している例もあるという。
これらは、今回の調査団がもはや形骸化していることを示すもので、1年も経過して市場など視察しても、中国が原因とする要因など確認できるはずもなく、形式的な視察訪問レベルというのが関の山であろう。