最も好きな女優さんは? と聞かれて、子どもの時から「八千草薫」と答えていた、その愛すべき女優さんが亡くなられました。享年88歳。これは私事で恐縮ですが、平成22年に亡くなった母の享年と同じです。著名人の死が続きますが、驚きと同時に無念という想いでは、八千草さんに勝る記憶がみつかりません。
慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
今年の埼玉県は随分と投票に出かけた印象がありますね。その選挙年が参議院議員補選でほぼ終了しましたが、最大のポイントは、誰が当選したとかという以前の問題として投票率の一層の低下傾向がはっきり示されたということでしょうか。
27日の参議院議員補選は、上田前知事の圧勝が予測されたこともあって、県選管の最終発表では県内全体で20.81%と、かろうじて20%台を保つ低さでした。30%を超えたのは、県内唯一の村である東秩父村の37.25%。しかし、同村の投票者数は936人です。ちなみに、幸手市は23.38%、お隣久喜市は22.68%、杉戸町は20.82%という結果でした。この結果は、昨今の傾向に加えて、この選挙に対する関心度そのものが低かったことがあったと思います。そういう意味においては、選挙をすることにどこまで意義があるのかということを考えさせられました。
なにしろ、この選挙にかかった費用が22億円というのですから、当初無投票とまで言われた経緯からかなり高額な税金が使われたわけです。突然、立候補を表明したN国党の候補者の思考には、いったい埼玉県をどう導きたいのかがわかりにくかったこともありますが、NHKの受信料ほどには選挙コストに頭は巡っていなかったようです。参議院選挙の時も国政とNHKを結び付けて国民生活をどう変えたいのかまでは理解できませんでした。問題を起こすことで知名度が上がり、そこに少なからず賛同者が増えていったといった感が拭えません。
参議院選挙で当選してまもない状況で辞職し、比例で同党の次点者が繰り上げ当選するという、有権者無視かつ身勝手な選挙行動。この後は、神奈川県海老名市、奈良県桜井市、東京都八王子市か府中市、神奈川県藤沢市、大阪府大東市、さらには来夏の東京都知事選まで、自らの立候補を視野に入れているというのです。次期衆院選には比例北関東ブロックで15人の女性を含む30人を立て、比例での当選を1~2名見込んでいるとか。
選挙制度の範囲とは言え、理解に苦しむ政治思考であると思えてなりません。もっとも、選挙のバラエティー化や劇場型選挙というのは、けっして新鮮なワードではありません。話題性が高いだけで総理候補とまでもてはやされるのですから。
こういった政治・選挙の在り方は、時代の流れの中でとくに若者の思考変化をリードする形で、山本太郎、立花孝志といった今までにない政治屋を生んでいるものと思います。SNSでは、これらをカルト的集団と呼ぶ一面もありますが、日頃の政治不信が社会に対する不満となって、選挙で爆発することを目論んでいるというのは、あながち当たらずとも遠からじなのかもしれません。
今、好評を博している映画に「ジョーカー」という米映画があります。女性や貧困者といった存在を無意識のうちに差別している現代社会の闇の中で、地下鉄の中で自らにふりかかる危機に堪忍袋を切らし、怒りの引き金を引くことで殺人スイッチが入ってしまう売れない道化師。自らの生い立ちに関係する虐待を知ることで実母の命に手をかけ、世の不条理に対してプライオリティーの命を奪うことをためらわないジョーカーへと変身していくストーリー。映画ではゴッサムシテイーと称するニューヨークの現代事情がいやというほどスクリーンに広がるのです。アメリカの裏事情は実際にこういう一面を持っているのではないかと感じさせる重い内容です。
そこまでは考えられないにしても、奇をてらうという意味ではれいわやN国という政党は若者の心をひきつける点があるのかもしれません。
選挙運動も資金があってのことですが、N国党の場合は、立花党首のユーチューバーとしてのスポンサー料が月額1,000万円から1,500万円に及ぶという説もあります。これも、スマホ社会がもたらした政治・選挙の新しい姿と言えるのでしょうか。
選挙の結果に基づく政治活動なんだという点からは、深い観点から公職選挙法のみならず選挙制度の在り方を考え直す時期に来ているのかもしれません。ついつい溜息をついてしまいそうな昨今の選挙実態を見るにつけ、そんな思いにふける日々です。それは低投票率だけの問題ではないようです。